聖跡のご紹介
明治天皇 絵画と聖蹟「第11回 京浜鉄道開業式行幸」
江戸時代末、鉄道に関する情報が諸外国からわが国に伝わりましたが、幕府の崩壊によって鉄道の敷設は実現しませんでした。
明治3年(1870)、英国から資金と技術の提供を受け、大隈重信・伊藤博文・井上勝(まさる)らが推進役となって工事が進められました。井上は、幕末に伊藤らとともに長州藩士としてイギリスに密航し、ロンドン大学で鉄道技術を修得した、日本の鉄道の父と呼ばれる人物です。
沿線住民の反対などもあって敷設工事は難航しましたが、明治5年、東京の新橋と横浜間(26キロ)が1時間で結ばれました。開業前の7月、九州・西国巡幸(さいごくじゅんこう)からの帰途、明治天皇は横浜から品川まで汽車に試乗されています。
明治5年9月12日、新橋・横浜間を結ぶわが国初の鉄道が開業しました。表紙の絵は、天皇が馬車で新橋駅に到着されたときの様子です。新橋・横浜間を汽車で往復した天皇は、両駅での開業式にご臨席(りんせき)されて「此(この)便利ニヨリ貿易愈(いよいよ)繁昌庶民益(ますます)富盛ニ至ランコトヲ望ム」との詔(みことのり)を下され、鉄道がわが国の繁栄に寄与することを念願されました。
鉄道の開業は、わが国の文明開化を象徴する出来事となりました。
*聖蹟に行ってみませんか*
〔旧新橋駅〕 東京都港区
明治五年に開業した新橋駅の旧駅舎は、大正12年(1923)の関東大震災により焼失しましたが、平成15年(2003)、「旧新橋停車場」として当時と同じ場所に再現されました。建物内には「鉄道歴史展示室」があります。
■JR「新橋駅」より徒歩5分